論文基礎知識

論文雑誌における「査読」について解説

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査読(ピアレビュー)ってなに?

研究者が論文ジャーナルに原稿を投稿した場合、ジャーナルはそのすべてを掲載するわけではなく、それぞれの基準に満たしたと思われる原稿だけをスクリーニングします。このスクリーニングのプロセスの一つが査読(ピアレビュー)です。査読とは同じ研究分野の別の研究者(匿名であることが多いです)がその原稿を読み、論文掲載に値する内容であるかを審査することです。

査読プロセスを解説

エディター

まず、論文ジャーナルに投稿された原稿はエディター呼ばれるその原稿の担当者に送られます。通常、エディターはまずその原稿が審査に値するかを判断します。この時点で考慮に値しないと判断された論文はそこでReject(掲載拒否)され、審査は終了します(これをエディターキックと言います)。ハイインパクトジャーナルといわれるような雑誌ではこのエディターキックの割合が非常に高く、殆どの論文は査読すらされずに即座にrejectされます。

査読者の選定

エディターによって無事、査読の価値ありと判断された原稿は次に査読者に送られます。論文を投稿する際に「この人ならフェアな審査ができそうな人を推薦してください」ということを求められたり、そうでない場合はカバーレターにそうした情報を付記することが多いですが、エディターはこのリストを参考にして審査を行う査読者(レビュワー)を選定します。ただし、あくまで「参考」であって推薦したリスト以外のレビュワーが選ばれることもあります。ジャーナルによって異なりますが通常2人以上5人以下のレビュワーが選定されます。

査読者による審査

原稿が査読者に回ると、決められた期間(ジャーナルによって数週間の場合もあれば数か月の場合もある)内にその論文を読み、実験の手順や分析、結論の導き方に欠陥がないか、その論文を出版する価値があるか、など様々な視点で評価を行い、審査レポートを作成します。この際、

  • accept(そのまま受理してよい)
  • minor revision(受理するには細かい修正・追加が必要)
  • major revision(受理するには広範な修正・内容の追加が必要)
  • reject(掲載拒否)

の評価を下し、その評価に至った理由を論理的に説明します。

エディターによる判断

レビュワーからの審査レポートが集まった段階で、エディターは論文を受理する(一回目でそうなることは滅多にありませんか)、審査を続けるか、rejectするかの判断を行います。

審査レポートへの対応

エディターがminor revision / major revisionによる審査継続の判断を下した場合、論文の著者は審査レポートに応じて内容の修正・追加を行います。審査レポートに書かれている指摘に対してはすべて対応しなければならず、スキップしてはいけません(ただし、十分論理的であれば「この項目には対応しません」ということを言うのは構いません)。論文の改訂(revise)でどこをどのように修正したかを細かくレポートにまとめ、修正した原稿とともに再度投稿します。

第二ラウンド

この修正原稿を受け取ったエディターは、レビュワー達にそれらを送付し、修正や反論が十分であるか判断を仰ぎます。修正が不十分であった場合、エディターが許す限り審査と修正のプロセスを繰り返します。

論文受理

エディターが論文掲載に必要な修正が十分行われたと判断した時点で論文が掲載受理(accept)となります。

エディターキックまでの期間 (Nature, Science, PNAS, Nature Communications)

論文がエディターキック (editor kick)でリジェクトされる場合、どのくらいの期間で結果が返ってくるのでしょうか?
査読の結果や所要期間、ジャーナルの質についてのコメントをシェアするサイトscirev (https://scirev.org/)に投稿された情報から、Nature, Science, Nature Communictions, PNASにおいて論文がエディターキックされるまでの期間をヒストグラムにしました。Nature以外の3誌については概ね1週間くらいが典型的な期間と言っていいでしょう。Natureでは0~2日で即リジェクトになる論文がかなりあるようです。また、それ以上審査が長引いてからエディターキックされる場合も一定の割合で存在しています。(尚、scirevへの投稿では「長々と待たされた挙句エディターキックだった!」という怒りの投稿が多い(?)というサンプリングバイアスが存在している可能性があるので注意が必要です。)

査読者になるには?

査読者は関連した研究を行っている研究者の中から選ばれます。自身の論文を出版し、その分野で十分な審査ができるであろうという判断がなされる必要があります。査読者候補として選ばれた場合、ジャーナルからメールで「この論文のレビューをしてくれませんか?」という連絡が来ます。基本的に謝礼は無しのボランティアですが、分野への貢献、最新の研究動向が知れる、エディターに名前が売れるなどの理由で、多くの研究者が(忙しくなければ)引き受けます。

査読レポートの書き方

何を書くか

査読レポートを書く場合、基本的にはそのジャーナルの規定(明示されている場合が多いです)に従って、それぞれの点において原稿が十分な質であるかを評価していきます。下記にその一例を示します。まず、下記のような点に対して問題がないかを判断します。

  1. データの取得に問題がないか、十分か
  2. 統計処理が行われていた場合、十分か
  3. データの解釈は適当か
  4. 結果の表示(図など)は適切か
  5. 手法が十分に記載されているか
  6. 主張をサポートするだけの十分な結果が得られているか
  7. 得られた結果に対して整合する別の仮説に対して十分議論されているか
  8. 全体が明瞭に書かれているか

といった点について問題があれば論理的に指摘します。そして、内容に関して

  1. 結果や主張に十分な新規性があるか
  2. 適切に既存研究が引用されているか
  3. 主張が分野にとってどれだけ意義をもつか
  4. 主張が既存研究の中て適切に位置づけられているか

などを評価してレポートに記入します。これらをもとに、最終的にaccept/minor revision/major revision/rejectのうち一つを選び、エディターに推薦します。逆にいうと自分が論文を書くときにはこうした基準に照らして十分な質になっているか確認すると良いでしょう。

査読に使える例文の探し方

査読レポートに使える例文集は様々な方がまとめられており、「査読」「例文」などで検索すると無数に見つかります。また、eLifeF1000Researchといったジャーナルではレビュワーの審査レポートを公開するという取り組みを行っており、実際にどのように査読が行われているのかを見ることができます。

 

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