論文リバイス時のResponse Letterを書くときに重要なポイントまとめ

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計算生物学のジャーナルPloS Computational Biologyには10 Simple Rules (https://collections.plos.org/ten-simple-rules)という企画があり、研究者がキャリアの中で直面する様々な問題に対して、一つのテーマにつきノウハウを10個にまとめた記事たちが公開されています。ここでは、その内容のまとめをシェアします。今回は、WS Noble (2017) “Ten simple rules for writing a response to reviewers(査読者に返事を書くのための10個のシンプルなルール)”の内容について紹介します。

尚、元の記事(https://journals.plos.org/ploscompbiol/article?id=10.1371/journal.pcbi.1005730)はクリエイティブコモンズライセンスが適用されており、本記事について著作権上の問題が発生しないことを確認しています。

 

論文を投稿したところ、喜ばしいことに査読に回されました。さて、査読からコメントが返ってきて、編集者はそれに沿って改定するように求めています。この課題にどう取り組めばいいでしょうか?

(尚、「査読」について知りたい方はこちらの記事によくまとまっています→論文雑誌における「査読」について解説

査読のプロセスの理想としては、その分野の多くの専門家のアドバイスを取り入れることで論文を大変素晴らしいものにできます。確かに、複数回の査読を経た論文は、すぐに受け入れられる論文よりも引用数の点で優れていることが示唆されています。ところが実際には、情報に誤りがある、偏っている、などなどの問題があると思われるコメントの数々に対して取り組もうとするとなると、感情的な負担がかかるかもしれません。

綿密に作成された「査読者への回答」は、リバイス(論文の改定)の重要な要素です。リバイスした論文と共に提出され、批評に対応して、どのような変更を施したかをまとめます。論文をリバイスすること自体に集中するあまり、この文書を明確かつ説得力のあるものにするための手間を省いてしまうのはよくあるパターンです。その結果として、査読者と著者の間で誤解が生じ、最悪の場合、良質の論文が却下されてしまう恐れがあります。以下は、査読者への効果的な回答を作成するのに役立つ、10の簡単なポイントです。

 

ルール1:最初に概要を説明し、そのあとに細かく返答する

回答文書は通常、変更の概要から始まり、査読者すべての最も重要な批判に対応して実行した、新しいデータと分析を提示します。査読者にわかりやすいように、論文および論文の補足資料には入れない図や表を、回答文書に記載してもよいということを覚えておきましょう。追加した結果について、イントロダクションで言及することもできます。複数の査読者から同じ指摘があったのなら、その事を要約の中で触れておくのもよいでしょう。その後、回答文書には、全ての査読での指摘点と、それに対する回答が、交互に記載されていくべきです。

 

ルール2:すべての査読者に対し、礼儀正しく尊重して

査読者の言っていることがちょっとおかしいと思っていても、査読者にわざわざそれを悟らせる必要はありません。査読者が何かをきちんと理解していないとしても、あなたの記載が十分に明確でなかったためかもしれない事を覚えておきましょう。査読者がこの分野の専門家ではないと思われる場合は、このレベルの専門知識(またはその不足)が、この雑誌の多くの読者のレベルであるかもしれない事を忘れないでください。専門家だけでなく全ての読者に理解してもらえるような、クリアな論文に仕上げることが目標なのですから。

時には、一部の批判を理解するのに苦心することがあるでしょう。質問の内容から、査読者が、研究全体やいくつかの仮説について、大きく誤って解釈していることが明らかになることがあります。特定のコメントが根拠のないものと思われる場合、特に1人の査読者がそのようなコメントを多数寄せている場合は、論文の主題となる仮説を、十分に説明していないことが原因と考えられます。

あるいは、査読者があなたに敵対しているとか、競合する研究者で論文の発行を妨害しようとしていると思い込むことがあるかもしれません。そんな時は、回答文書の中で査読者に直接対処しようとするのではなく、別の文書で編集者に懸念を伝えるようにしましょう。

まれに、査読者の批評がただの悪口だと感じることがあるかもしれません。このような場合は、コミュニケーションの不足かもしれないと考える事です。失礼な事を言われたからといって、同じ態度を示していい理由にはなりません。科学研究の結果を発表することがあなたの目的なのですから。

 

ルール3:落ち度を受け入れる

査読者が何か誤解しているときは、明確に表現していなかった事を謝罪しましょう。たとえ、論文の文章がクリアであると自負していても(つまり単に査読者が間違えているだけの場合でも)、書き直した上で、その改訂部分を回答文書で表明する事を検討するのです。要求された変更が不要と思われたとしても、査読者の指摘に耳を傾け理解したことを示すために、多くの場合は修正をした方がいいでしょう。

 

ルール4:回答文書は自己完結型で

文章や図を変更したときは、その変更を直接回答に引用しましょう。できれば、変更が適用された箇所の行番号を参照として明らかにし、その際は、元の文書と改訂された原稿のどちらを参照するのかを必ず指定してください。自己完結型にすることで、原稿と回答文書を行ったり来たりする必要がなくなるので、査読者は修正箇所をスムーズに理解することができます。それに、回答文書を自己完結型にすることで、査読者が再度原稿を読み込むことで新たな指摘箇所を見つける可能性を減らすことができます。章が増えてしまった場合など、引用するには長すぎる改訂があった場合は、この限りではありません。そのような変更は、付け足した章のタイトルを記載するなど、簡潔かつきちんと伝わるように回答の中に示しましょう。

 

ルール5:すべての指摘に対応すること

査読者から頻繁に寄せられる不満は、査読者が指摘した点のいくつかに著者が対処していない、というものです。必ずしも査読者があなたの回答に納得するとは限りませんが、だからと言って、回答するのが難しいからと指摘を無視することは避けるべきです。

多くの場合、査読は箇条書きにまとめられていますが、1つの項目に2つの別々の問題を提起することがあります。そのような場合、必ず両方の批評に明示的に対応してください。項目の中の問題ごとに、回答を個別に記載しましょう。無理に一つの文章にまとめるより、こうした書き方の方が適切です。

 

ルール6:査読者に分かりやすいよう、書体や文字色を工夫しよう

文字の書体や色、段組みを活用して、査読者からの指摘・あなたの回答・原稿の変更部分、のそれぞれの要素を区別できるようにしましょう。記載のルールについて、回答文書の導入部分で説明しておくと良いです。

 

ルール7:コメントへの直接の回答を第一に

背景を説明することは必要ですが、まずは直接の回答を示すべきです。イエスなのかノーなのかを、先に述べましょう。受けた指摘が正しいのであれば、そのように言いましょう。査読者からのコメントを真摯に受け止めていることを表明し、どのように指摘に対処したのかを迅速に示すべきです。

 

ルール8:可能ならば、査読者の要求に応えること

一般的には、要求された追加の実験や分析を実行することに煩わされたくないと思っている、という印象を査読者に与えることは避けるべきです。査読者から要求された追加の解析が、たとえあまり意味がなさそうだとか、適さない方法であったとしても、要求に応え、結果を示し、それを論文本体に含めるべきでないと考える根拠を示せば、あなたの立場を有利なものにすることができます。

査読者が詳細な、あるいは非常に洞察に満ちた提案を行い、それを論文に組み込んだという場合には、謝辞の項で査読者に対する謝礼を表明するのが適切かもしれません。習慣的に、全ての論文で謝辞に査読者を含めて記載する人も多くいますが、PLOS Computational Biologyのように、それが許されない雑誌もあるので注意が必要です。

やたらと要求してくる査読者も中にはいます。今回の論文の範疇を超えている、と言うこともできますが、どこまでが範疇なのかを正確に示すことは困難である、という気づきは大切なことです。査読者の10の指摘のうち、9つが論文の範疇の外だという場合は、査読者が満足する回答をするのは難しいでしょう。そうした範疇外だと思う指摘に対しても、何かしらの対処はしなければなりません。

時には、編集者の裁量に頼る必要があるかもしれません。例えば、編集者は大抵、原稿を短くするよう要求しますが、査読者は大抵、詳細や実験や解析の追加を要求します。また、補足資料の内容を本文中に移すように査読者から要求されることもあります。編集者の同意が得られた場合はそのようにする、と返答しても良いでしょう。

 

ルール9:以前のバージョンとの変更点を明確にする

査読者からの指摘を受けて行った修正点を、どのように行ったかについて正確に査読者に伝えることが、時として難しいことがあります。よくある悪い例は、「この部分は本文中で以下のように示されており・・」などのように回答するやり方です。これでは、著者が既に書かれていた論文の該当箇所を挙げているだけなのか、修正した原稿の変更部分を記載しているのか、はっきりと示すことができていません。回答の中では、元の原稿と修正した改訂稿の双方を明確に参照し、どのような変更を加えたかを説明しましょう。

 

ルール10:必要ならば、response letterは2回書く

「査読者への回答」文書の最初のドラフトは、査読者が何を考えているのかを分析しながら、回答の筋道と、追加の実験を実施することによる費用対効果を検討することを目的として作成します。あなた自身と、共著者にとって、最終的な「査読者への回答」をどう形作るかの決定に関して、有用なたたき台になるものです。また、査読者が不公平だとか失礼だとか感じていた場合、イライラの空気抜きができる場にもなります。下書きができたら、本当に査読者に見てもらいたい内容を含む文書を新たに書き起こしましょう。実際には、最初に「空気抜き」版を書き、数日たってから「本番」の回答文書に取り掛かるとやりやすいです。その間に査読者からの批判のいくつかについては対応ができていることでしょう。

「査読者への回答」文書とは別に、担当エディターに手紙を書く必要があるかもしれません。利益相反に抵触するおそれについてや、査読者の指摘が、他の査読者の指摘や雑誌の方針と矛盾している場合に相談できます。

論文発表の過程の中で、査読者からの批判への対応は最も負荷が高い部分の一つです。この過程を乗り越えるため、大抵の査読者は、科学論述で表されている結果の妥当性を保証の助けとなるべく無償で働いてくれている良き同僚である、と考えましょう。ほとんどすべての場合において、査読のプロセスを経た原稿は、元の原稿と比べ優れたものになっているのです。

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