ベビースキーマは大人のかわいさ知覚と養育行動の動機づけを引き出す(Glocker et al., 2009)

[紹介論文] Glocker, M. L., Langleben, D. D., Ruparel, K., Loughead, J. W., Gur, R. C., & Sachser, N. (2009). Baby schema in infant faces induces cuteness perception and motivation for caretaking in adults. Ethology, 115(3), 257-263.

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Abstract

  • 動物行動学者のKonrad Lorenzは、かわいいと知覚され、他個体の養育行動を動機付ける―子どもの生存率を高める進化的機能を伴う―乳児的身体的特徴(large head, round face and big eyes)のセットであるベビースキーマを提唱した。先行研究におけるこの基本的な概念は、模式的(schematic)な乳児の表象あるいは相関的アプローチに限定されていた。本研究では、かわいさの知覚と養育行動の動機づけにおけるベビースキーマの影響を、乳児の顔の写真を用いてテストした。本研究ではベビースキーマの概念をパラメトリックに操作するために、写真の肖像の全ての特性を保持したまま、ベビースキーマの特性が高いもの(e.g. round face and high forehead)と低いもの(e. g. narrow face and low forehead)を作成した。大学生(n = 122)が乳児のかわいさと養育のモチベーションについて評定した。
  • 高いベビースキーマの乳児はよりかわいいと評価され、養育に対するモチベーションをより強く引き出した。本研究は初めて実験的にベビースキーマの影響を実際の乳児顔において示したものである。本研究の知見は、ベビースキーマ反応は、ヒトの養育行動の基本という社会的認知の重大な機能であることを示し、乳児と養育者のインタラクションに対して示唆を持つものである。

Introduction

  • ベビースキーマは、ポジティブ情動の反応を引き起こす。また、これらはかわいいと知覚され、他個体からの養育行動を引き出す(Lorenz 1943)。幼若個体が養育に頼るような種においては、このようなバイアスは適応的であり、生存率が上がる可能性がある(Bowlby 1969; Eibl-Eibesfeldt 1989; Hrdy 2005)。それゆえ、ベビースキーマへの反応は、ヒトの社会的認知の基本的な機能を提供するかもしれない。

Methods

participants

  • 大学生122人
    • 66人:Cuteness Task(分析されたのは女性36人・男性26人)
    • 56人:Caretaking Task(分析されたのは女性25人・男性19人)

stimuli

  • Hildebrandt & Fitzgerald (1979)で用いられた乳児の画像を加工し、ベビースキーマが高いもの、低いものと、加工をしていないものを刺激として用いた。刺激画像は7,9,11,13ヶ月の乳児のカラーの顔写真であった。加工においては、17の乳児の顔(8人の男児、9人の女児)が操作されたため、実験には51枚の画像が用いられた(乳児の顔×ベビースキーマの操作)

Experimental procedure

  • Cuteness Task:参加者はそれぞれの乳児のかわいさについて評定を求められた。
  • Caretaking Task:画像の乳児の養育のモチベーションの程度の評定が求められた。
  • 評定は5点尺度で、刺激画像と評定尺度が4秒間一緒に呈示された。

Statistical analysis

  • ベビースキーマ(参加者内)と性別(参加者間)の2要因について分散分析を行った。

Result

Cutness ratings

  • ベビースキーマの主効果は有意であったが、性別の主効果と交互作用は見られなかった(ベビースキーマが高いほど、評定が高かった)。

Caretaking motivation ratings

  • ベビースキーマの主効果と、交互作用が見られたが、性別の主効果は見られなかった(ベビースキーマが高いほど、評定が高かった)。

Discussion

  • 本研究の結果は、乳児の顔におけるベビースキーマが、成人においてかわいいと知覚され、養育行動が誘発される、最初の実験的研究である。なお、生態学的妥当性の低い刺激が用いられた先行研究、あるいは相関的アプローチからの先行研究と一致していた。
  • 先行研究では、かわいい乳児はより好ましい、健康的である、能力がある、などと評定されているが、これはベビースキーマによって媒介される効果であるかもしれない。
  • 性差については、女性においてはより強い養育行動を引き出すことが明らかになったが、かわいさの知覚には性差は見られなかった。これについては、知覚自体は同等であるかもしれないが、女性における養育行動へのバイアスは、女性がほとんどの社会で主な養育者であることを考慮すると、進化的に有利であるかもしれない。

 

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