文献を引用するときに気を付けたい6つのルール

[紹介論文] B. Penders (2018) Ten simple rules for responsible referencing. PloS Computational Biology 14(4):e1006036.

[論文URL] http://journals.plos.org/ploscompbiol/article?id=10.1371/journal.pcbi.1006036

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既存研究との違いや整合性、研究の新規性を明確にし、研究の意義を正しく主張するために論文中で参考文献を適切に引用することが重要です。この「引用」に関してPLoS Computational Biology誌の“10 simple rules’’という特集の中にある

B. Penders (2018) Ten simple rules for responsible referencing. PLoS Comput Biol. 14(4):e1006036

という記事(オープンアクセスジャーナルなのでどなたでもPDFをダウンロードできます)に正しい引用の仕方、気を付けるべき点などが良くまとまっているので内容を紹介します。このシリーズは10項目に分けて研究の様々な場面で必要になるノウハウを紹介するという形式になっているのですが、本記事については実践的に重要と思われる最初の6項目についてまとめます。残りについては見出しだけ最後に載せますので、興味のある方は元論文をご参照ください。

※本論文はクリエイティブコモンズライセンスに基づいて公開されているものであり、仮に内容をそのまま和訳したものを公開したとしても(creditを明記すれば)著作権の問題は生じません

 

1.関連する参考文献を含める

論文中に書かれる、研究の問いの妥当性、使用したメソッドの明示、その試料を使用する根拠、内容に関連する議論などにおいて、関連する既存研究の引用が行われます。これらの引用が不十分だと、記載されたアイディアやメソッド、批判や議論がその論文のオリジナルであるという誤解を与えてしまいます。文献引用はアイディアがどこから来たのかを明示し、読者がそれについてより詳しく調べる助けになります。

ただ上記については例外があります。それはその事実や発見、メソッドが周知の事実となっている場合です。例えばDNAが4つの塩基から構成されていることを述べるのにわざわざそれを最初に示した論文を示す必要はありません。ただ、どのタイミングで周知の事実とみなすかは難しく、分野の中での合意に至るまではしばらくの時間がかかります。

 

2.引用した文献は読む

引用する論文は内容をしっかり把握する必要があります。論文は、その批判も含む様々な文脈で引用されます。他の論文で引用されていたからといってそのまま引用すると、本当にその論文が自身の論文の内容を支持するかわからないので注意が必要です。また、論文の中で引用した文献リスト、及び、どこでどのような引用がなされているかということはそれ自体がその論文の信ぴょう性につながります。この意味でも論文な内容を精査し、正しい文脈で引用がなされているかに注意をはらう必要があります。

 

 

3.内容に沿って引用する

研究のどこかの段階である論文を引用することを決めたとしましょう。その論文をどこでどのように引用するかには一向の余地があります。ただ含めればよいというものではなく、その文献が具体的にどのように貢献したのかを明示する必要があります。したがって、一つの文献を論文中の議論で複数回引用する必要があるということも良くあります。

“トロイの引用’’ (Torojan citation)という言葉があります。これはその論文と似た発見を報告している論文を重要でない議論の文脈の中で引用し、(しばしば故意的に)その文献の重要な議論や貢献を無視することです。こうすることによってこの文献の真の重要性をあいまいにし、自分の論文の新規性を高く見せかけてしまいます。これによってレビュワーやエディターから関連する論文を引用するように、という要求をごまかしてしまう、という問題のある行為があります。また、トロイの引用は(1)あなたが引用文献の内容を理解していない、(2)コミュニティの中で、またその論文の著者たちの中でその文献の貢献や質について議論が存在している場合、に無自覚的に行ってしまうケースがあり、注意が必要です。

 

 

4.あいまいな引用は避け、明確にする

データや試料、確立したメソッドなどにおいては比較的そうではありませんが、議論の中で行われる引用に関しては、それが正しい場所であったとしてもただ引用するだけでは不十分です。こうした場所で引用を行う際には、その文献の価値、妥当性、重要性をそれらが論文の結果や結論を支持するのか矛盾するのか明確にする必要があります。なぜその既存研究を引用するのか、そしてそれにどのような評価を与えようとしているのか、そしてそれらについて読者が自分で確認することができるかを確認しましょう。

 

 

5.必要な時は自分の研究も引用する

引用についての批判的な議論や引用によって計算される指標の評価の文脈では自己引用はタブーとみなされています。しかし、自分の研究との差分を示すために適切な引用を行うことは重要です。したがって、そのような場合はここまでのルールに従って引用される必要があります。どの程度自己引用を認めるかというのは分野によっても異なります。

ただし、自己引用は常に問題がないという意味ではありません。例えば、あまりにも自己引用が多いとそれはsalami slicing(サラミを薄くスライスするように一つの研究を細かく分割して発表すること)とみなされるかもしれません。この問題のある行為は自己引用と合わせて業績リストと引用数を水増しすることを目的としています。

 

 

6.含める参考文献に優先順位をつける

多くのジャーナルは含める参考文献の数に制限を設けています。もしそのような制限がなくても、参考文献を含めた文字数に制限を課しているジャーナルもあり、この場合も事実上含めることのできる参考文献の数に制限があるということになるでしょう。こうした場合、どの引用文献を除くのかしばしば難しい場合があるでしょう。こうした場合には明確な基準で参考文献に優先順位をつけることが重要です。以下にそのポイントを列挙します。

  1. 論文ごとに、参考文献の優先順位を考える。前回の論文の時に使った優先順位を使いまわししない
  2. セクションごとに優先順位を考える。全体で優先順位をつけない。
  3. Introductionではレビューを優先する
  4. Discussionでは実証的な研究を優先する。論文の貢献について詳細な比較ができる。
  5. 査読なしの文献より、査読ありの文献を優先する
  6. 自己引用は優先度を下げる
  7. 1か所ごとに特定の主張をサポートするための引用の数を減らす
  8. メソッドに関する引用をSupporting Informationに回す
  9. 同じ優先度になった場合、女性が筆頭著者またはラストオーサーになっているものを優先する(科学における男女比のアンバランスを更正するため(筆者註:議論が分かれそうなところですが))
  10. 上記を尽くしてもどうしようもない場合は、超過しても良いかエディターに打診する

 

本まとめは以上になります。論文を書き始めの学生の方などのご参考になれば幸いです。

 

以下、元論文の残りの項目になります。これらに関しては個人的に優先度が低く and/or “simple rules”にはなっていないと思ったので本投稿では割愛しました。ご興味をお持ちのかたは是非元の論文をご参照ください。

7.Evaluate citations as the choices that they are

8.Evaluate citations in their rhetorical context

9.Evaluate citations as framed communication

10.Accept that citation cultures differ across boundaries

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