参考文献を適切に引用することは論文執筆の中でも特に重要なポイントとなります。この「引用」に関して押さえるべきチェック項目をまとめました。
この記事の見出し
1.必要な場所で引用ができているか
文献の引用が不十分だと、記載されたアイディアやメソッド、批判や議論がその論文のオリジナルであるという誤解を与えてしまいます。文献引用はアイディアがどこから来たのかを明示し、読者がそれについてより詳しく調べる助けになります。逆に言うと、既存研究を引用することで自らの論文の手順や主張をサポートすることができます。また、既存研究との関連を議論することは既に述べた通り非常に重要で、その結果が自らのものと矛盾していたとしても無視してはいけません。
1.研究の背景や問いの妥当性
2.使用したメソッドや試料の明示、またそれらを使用する根拠
3.内容や既存研究との関係に関連する議論
において、関連する既存研究が適切に引用されているか確認しましょう。
ただ上記については例外があります。それはその事実や発見、メソッドが周知の事実となっている場合です。例えばDNAが4つの塩基から構成されていることを述べるのにわざわざそれを最初に示した論文を示す必要はありません。ただ、どのタイミングで周知の事実とみなすかは難しく、分野の中での合意に至るまではしばらくの時間がかかります。
2.引用した文献の内容を確認したか
当然ですが、引用する論文は内容をしっかり把握する必要があります。論文は、その批判も含む様々な文脈で引用されます。他の論文で引用されていたからといってそのまま引用すると(孫引きといいます)、実際にはそんなことは書いていなかった、ということも少なくありません。
論文の中で引用した文献リスト、及び、どこでどのような引用がなされているかということはそれ自体がその論文の信ぴょう性につながります。この意味でも論文な内容を精査し、正しい文脈で引用がなされているかに注意をはらう必要があります。
3.あいまいな引用は避け、なぜそれが引用されているかが明確になっているか
データや試料、確立したメソッドなどにおいてはこの次第ではありませんが、議論の中で行われる引用に関しては、その文献が何を示したのか、論文の結果や結論と整合するのか矛盾するのかを明確にする必要があります。なぜその既存研究を引用するのか、そしてそれにどのような評価を与えようとしているのか、そしてそれらについて読者が自分で確認することができるかを確認しましょう。
4.含める参考文献に無駄はないか
関連していれば何でもかんでも参考文献に含めればよいというものではありません。文献リストは必要十分であるべきです。
例えば「〇〇は近年活発に研究されている[1-10]」のように原著論文をまとめて沢山引用して、かつそれらの文献がそれ以降一切引用されないというのは望ましくありません。この場合は少数の適切なレビュー論文でできるだけ置き換えましょう。逆に個別の議論に関してはレビュー論文ではなく、対応する原著論文をそれぞれ特定して引用します。
5.参考文献リストの情報にミスはないか
参考文献リストに誤字脱字や情報の誤りがあると、読者が困るだけでなく、論文のクオリティ自体も低いと評価されてしまうかもしれません。参考文献リストには、著者名、論文タイトル、ジャーナル名、volume、ページ数、発表年といった多くの情報が含まれており、全てについてチェックするのは大変ですが、時間をとって慎重にチェックするべきです。筆者の個人的な経験では、初稿の段階ではかなりの量の誤りが存在します。(文献リストを利用していても情報が間違っていたり、形式がそろっていなかったりします)おすすめなのは項目ごとに分けてリスト全体をチェックするやり方です。各段階で、一つの文献についてチェック項目が一つ、という風にすると見落としが少ないです。
1.フォーマットが一貫しているか
全ての引用情報について形式が一貫しているか(ジャーナルの規定に沿っているか)確認しましょう。ピリオドが抜けていないか、論文タイトルの大文字小文字が正しいかなどは見落としやすいので注意しましょう。まずこの点についてだけリスト全体をチェックします。
2.著者名があっているか
次に著者名についてだけ同様にリスト全体を確認します。
特殊なアクセントが含まれている場合はそれが反映されているか。また、ファーストネーム/ミドルネーム略す場合はどこからどこまでがファーストネーム/ミドルネームなのかに注意します。自信がない場合は、その著者のウェブサイトを調べたり、他の論文においてどのような引用がなされているかを確認しましょう。(ただし判断が難しい場合はほかの論文でも誤っている可能性があります)。
3.タイトルがあっているか
そのあとはタイトルを確認します。一字一句あっているか、スペルミスがないか確認しましょう。
また、ジャーナルの記事では最初の文字(+コロンの後)、本の引用では各ワードの頭を大文字にする場合が多いですが、これもジャーナルの規定に沿って統一します。
4.ジャーナル名があっているか
ジャーナル名自体がまちがっていることは少ないですが、文献管理ソフトのから出力すると略称の仕方が一貫していない場合が良くあります。同じジャーナルは同じ略称となるようにチェックします。
5.巻数、ページ数があっているか
最後に巻数、ページ番号を確認します。
本記事は以上になります。論文を書き始めの学生の方などのご参考になれば幸いです。
本記事は
PLoS Computational Biology誌の“10 simple rules’’という特集の中にある
B. Penders (2018) Ten simple rules for responsible referencing. PLoS Comput Biol. 14(4):e1006036
を一部参考にしました。
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