パーキンソン病睡眠障害の原因は小胞体の脂質恒常性の乱れである (Neuron 2018年6月27日号掲載論文)

[紹介論文] Valadas, J. S., Esposito, G., ... & Verstreken, P. (2018). ER Lipid Defects in Neuropeptidergic Neurons Impair Sleep Patterns in Parkinson’s Disease. Neuron.

[論文URL] https://www.cell.com/neuron/fulltext/S0896-6273(18)30420-3

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結論から言うと、パーキンソン病における睡眠障害の原因が、ERとミトコンドリアの過剰な接触に起因するER脂質恒常性の異常であることを示し、それらを抑えることで睡眠障害が治ることをショウジョウバエで示した論文。

ということで今回abstractを全訳するのは、2018年6月27日号のNeuronに掲載の「ER Lipid Defects in Neuropeptidergic Neurons Impair Sleep Patterns in Parkinson’s Disease. (神経ペプチド作動性ニューロンのERにおける脂質の障害は、パーキンソン病における睡眠パターンを壊す。)」という論文で、ベルギーVIB-KU Leuven Center for Brain and Disease Research の Dr. Patrik Verstrekenの仕事である。

論文の視覚的なイメージはgraphical abstractを見るとよいと思いますので、そちらも参考に。

Abstract

Parkinson’s disease patients report disturbed sleep patterns long before motor dysfunction. Here, in parkin and pink1 models, we identify circadian rhythm and sleep pattern defects and map these to specific neuropeptidergic neurons in fly models and in hypothalamic neurons differentiated from patient induced pluripotent stem cells (iPSCs). Parkin and Pink1 control the clearance of mitochondria by protein ubiquitination. Although we do not observe major defects in mitochondria of mutant neuropeptidergic neurons, we do find an excess of endoplasmic reticulum-mitochondrial contacts. These excessive contact sites cause abnormal lipid trafficking that depletes phosphatidylserine from the endoplasmic reticulum (ER) and disrupts the production of neuropeptide-containing vesicles. Feeding mutant animals phosphatidylserine rescues neuropeptidergic vesicle production and acutely restores normal sleep patterns in mutant animals. Hence, sleep patterns and circadian disturbances in Parkinson’s disease models are explained by excessive ER-mitochondrial contacts, and blocking their formation or increasing phosphatidylserine levels rescues the defects in vivo.

私訳と勝手な注釈。パーキンソン病患者は、運動機能障害が発症するかなり前に睡眠パターンが乱れることを報告している。この論文では、ParkinおよびPink1モデルにおいて、概日リズムおよび睡眠パターンの障害が起こることを報告し、これら障害に特異的なハエモデルの神経ペプチド作動性ニューロンおよび患者由来のiPS細胞から分化した視床下部ニューロンをマッピングした。 ParkinとPink1は、タンパク質ユビキチン化によるミトコンドリアのクリアランス[*つまりはマイトファジー]を制御している。神経ペプチド作動性ニューロンに突然変異を持つ個体について、ミトコンドリアにおける主要な欠損は観察されなかったが、小胞体-ミトコンドリアの接触が過剰になっていることが見つかった。これらの過剰な接触部位は異常な脂質輸送を引き起こし、小胞体(ER)からホスファチジルセリンを枯渇させ、神経ペプチド含有小胞を産生できなくする。突然変異個体にホスファチジルセリンを与えれば、神経ペプチド小胞の産生が回復し、正常な睡眠パターンへと急速にレスキューがかかる。したがって、パーキンソン病モデルにおける睡眠パターンおよび概日リズム障害は、過剰なER-ミトコンドリア接触によって説明することができ、それらの形成を阻止するか、またはホスファチジルセリンレベルを増加させることで、それらの障害をレスキューできることがin vivoで示された。

こちらの論文で、ミトコンドリア脂質恒常性の乱れがリー症候群を引き起こすということが報告されたが、今回は小胞体の脂質恒常性の乱れがパーキンソン病の睡眠障害の原因となることが示されている。ミトコンドリアとER間での脂質のやりとりが、神経変性疾患に重要なファクターになっていることが改めてよく理解できた。

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