セクシャルハラスメントは直接の被害者だけでなく同僚にも悪影響を及ぼす
[紹介論文] Glomb, T.M., Richman, W. L., Hulin, C.L. & Drasgow, F. (1997) Ambient sexual harassment: an integrated model of antecedents and consequences. Organizational Behavior and Human Decision Processes, 71, 309-328.
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研究の背景と目的
社会的にも大きな問題となっているセクシャルハラスメントですが、仕事のストレス源としてセクシャルハラスメントの影響を調べた研究は多く行われており、被害者の仕事上のパフォーマンス、心理状態、健康状態にネガティブな影響を及ぼすことがわかっています。
これまでの研究は、ハラスメントの直接的な被害者に注目したものがほとんどであり、被害者の同僚などに対する影響は調べられてきませんでした。しかし、同じ職場で働いていれば、他の人が受けたセクシャルハラスメントを目撃したり、伝え聞いたりすることは当然あり、そのことで被害者と同様にネガティブな影響を受ける可能性が考えられます。
本研究では、このような間接的なセクシャルハラスメントへの接触を「Ambient Sexual Harassment」と名付け、その影響を調べました。
Ambient Sexual Harassmentは、職場(ワークグループ)内のセクシャルハラスメントの一般的・環境的なレベルと定義され、職場内で他人が経験した性的嫌がらせ行為の頻度によって定義されます。
方法
本研究では、公益事業会社(N = 455)と食品加工工場(N = 194)の女性従業員を対象に調査を行いました。
結果
その結果、セクシャルハラスメントの直接的な被害経験を統制しても、セクシャルハラスメントの多い職場にいる人ほど、仕事満足度が低く、心理状態が悪く、健康状態が悪いことがわかりました。セクシャルハラスメントへの間接的な接触は、直接被害にあうのと同様に、仕事上、心理的、健康上の悪影響を及ぼすと言えます。
セクシャルハラスメントは、直接の被害者だけでなく、同じ職場で働く多くの従業員にネガティブな影響を与えることがわかり、被害者個人の問題を超えて、職場全体で解決すべき問題だということが実証的に示されました。