ヒクランギ沈み込み帯における低周波微動と温度構造の関係
[紹介論文] S. Yabe, S. Ide, and S. Yoshioka (2014), Along-strike variations in temperature and tectonic tremor activity along the Hikurangi subduction zone, New Zealand. Earth, Planets and Space, 66:142, doi:10.1186/s40623-014-0142-6.
[論文URL] https://earth-planets-space.springeropen.com/articles/10.1186/s40623-014-0142-6
<背景>
スロー地震は世界中の様々な場所で発見されているが,その多くは西南日本やアメリカ西岸のカスケード沈み込み帯のように,若い海洋プレートが沈み込む沈み込み帯である.若い海洋プレートは古い海洋プレートに比べて暖かいため,沈み込み帯の温度構造が高くなる.また,低周波微動の高い潮汐応答性は高圧の間隙流体圧の存在を示唆するが,流体の起源となる沈み込んだ含水鉱物の脱水反応は暖かい沈み込み帯の方が浅部で開始すると期待される.これらのことから,スロー地震の発生は沈み込み帯の温度構造との関連が疑われる.ニュージーランド北島沖のヒクランギ沈み込み帯では,非常に古い海洋プレートが沈み込むが,大きなスロスリップが比較的頻繁に発生することが知られている.また,低周波微動の存在も報告されている(Kim et al., 2011; Fry et al., 2011; Ide, 2012).さらに,低周波微動の深さは沈み込み帯の走向方向に大きく変化している.陸上の熱流量観測によると,熱流量も沈み込み帯の走向方向に変化していることが報告されており,沈み込み帯の温度構造が変化していると考えられる.そこで,沈み込み帯の温度構造を数値モデリングを用いて推定し,低周波微動の震源深さとの対応関係について調べた.
<結果>
数値モデリングの結果は,北部ほどプレート境界面の温度が高く,浅部でスロー地震が発生すると考えられる350ºCに達することが分かった.一方南部では,温度が低いと考えても矛盾はないが,熱流量観測データの空間分布が十分ではないために温度条件を十分拘束することはできなかった.