短期の研究滞在を行うときに重要なこと

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サイエンスは世界中で行われており、研究者や学者の間では国際的な交流はよくあることです。雇用主や所属の変更を伴わない数週間から数ヶ月間の短期間の研究滞在は、研究の世界では主要な国際連携の形の一つです。このような「脳循環」は、コラボレーションの促進、人的ネットワークの構築、キャリアへの好影響、インパクトの大きい論文の促進、国際的な資金へのアクセス、様々な方法や科学的スキルに触れることによるアイデア、といった様々な利益を生み出します。この記事は、国際的な科学的流動による生産的な経験のための「10のポイント」です。あらゆる段階のキャリアの科学者、また修士・博士課程の学生にも役立つでしょう。

 

計算生物学のジャーナルPloS Computational Biologyには10 Simple Rules (https://collections.plos.org/ten-simple-rules)という企画があり、研究者がキャリアの中で直面する様々な問題に対して、一つのテーマにつきノウハウを10個にまとめた記事たちが公開されています。ここでは、その内容のまとめをシェアします。今回は、 Forero DA, Lopez-Leon S, Patrinos GP (2017) Ten simple rules for international short-term research stays. PLoS Comput Biol 13(12): e1005832.  の内容について紹介します。

尚、元の記事(https://journals.plos.org/ploscompbiol/article?id=10.1371/journal.pcbi.1005832)はクリエイティブコモンズライセンスが適用されており、本記事について著作権上の問題が発生しないことを確認しています。

 

 

ルール1:受入機関を選択する

所属している研究室と、受け入れを依頼したい研究室との学術・研究課題の親和性は、最優先事項です。他の点、例えば、国籍、言語、文化は二の次です。とはいえ、流動性の低い国では多様性が受け入れられにくいことを考慮に入れてください。調査によると、受入機関を選択する際に重要視されているのは、優れた教員または研究チーム、施設や設備、ある分野における名声と質の高い外国機関であること、といったポイントのようです。

適切な受入先を見つける方法はいくつかあります。簡単な方法は、興味のある分野で論文を発表している著者にメールを送ること、指導教官や知り合いに尋ねること、講習や会議に出席することです。また、大学、学術センター、担当機関、および業界のウェブサイトを検索することでも有益な情報を入手できるでしょう。受入れ大学の国際事務局に連絡することは、いくつかの管理プロセスや追加の選択肢を尋ねるのに役立ちます。多くの場合、受入部門の職員は、国際留学の支援を適切に行ってくれます。

 

 

ルール2:慎重に計画する

海外での研究滞在の計画は、様々な側面の事前準備に時間がかかるものです。受入機関での活動時間、航空券、宿泊施設、ビザ、保険や許可申請、実施される実験の詳細、ならびに他の研究室やセンターでのローテーション、等々。交換留学生やスタッフに必要な事務処理を十分に前もって実行することが不可欠です。科学者はこれらの文書が両当事者によって署名される前に国を出ることはできません。すべての詳細(活動時間、必要な場合には報酬、人的損害賠償責任保険、その他)は、契約書に明記されるべきです。これには、受入先、所属元、双方の研究室および機関のメンバーの間での適切な調整が必要です。現地の研究倫理委員会による承認など、受入機関で必要とされる主要な規制プロセスのスケジュールを明確に理解することが重要です。どこの国かが決まったら、大使館のウェブサイトまたは居住地の領事館を訪問し、また所属機関の国際事務局に連絡して、条件と、必要な旅行書類を発行するのにかかる時間を確認します。大使館では、資金源などの追加情報や、追加のワクチンが必要な場合はそのアドバイスを得ることができます。健康保険が受入国で使えることを確認し、できなければ国際保健に加入します。車を運転する予定があり自国の運転免許が受入国で有効でないならば、国際運転免許証を取得してください(通常1年まで有効です)。

 

 

ルール3:研究滞在のための資金を前もって確保する

海外研究に必要な資金を調達することは、研究者にとって最大の課題です。試薬や特殊な機器の使用には費用が必要であり、その費用は受入先または所属元の研究室に請求される可能性があります。時々、研究助成金の一部として、受入機関で利用可能な諸経費として負担してもらえることがあります。いくつかのケースでは、研究滞在での結果は、より多くの資金を得ることを目的とした、将来の共同プロジェクトのための予備的なデータとなります。所属機関も受入機関も資金を提供していない場合は、他の機関からの補助金を探したり、海外での研究を助成金申請書の項目に加えたり、滞在費を自分の貯金で賄うことを考えなければなりません。約9,000人の博士課程の学生を対象とした調査では、20%以上が海外での滞在に個人の貯蓄を使っているという結果でした。

 

 

ルール4:受入機関の組織を尊重する

機関ごとに、部門の編成方法に違いがありますが、国が違えば(さらに重要なことには、文化が違えば)その違いはより際だつこともあるでしょう。受入機関の組織を尊重することは、訪問者の活動にとって大切なことです。受入機関の組織、構造、意思決定の方針などの詳細を知ることで、より早く環境に馴染めるようになるでしょう。渡航前に、その部門で働いている人や、過去に研究で訪れたことのある人に、知っておいた方がよいことを尋ねるといいでしょう。滞在中は、「郷に入りては郷に従え」という諺に従ってください。何事も受け身ではなく、わからないことは尋ねましょう。事前の書面による許可なく、組織のデータを外部の人と共有したり、資料やプログラムを使用したり、データを分析したりすることは絶対にしてはいけません。

 

 

ルール5:受入研究室に馴染む努力を

初期の段階から、あなたを継続的に監督し学術的支援する、重要な役割を果たす直接のメンターまたはアドバイザー(PI以外の人であることもあります)を探すことが重要です。受入研究室のやり方をよりよく理解するために、滞在前にビデオ会議ツールなどを使用してラボのミーティングに参加することをお勧めします。他のメンバーとの適切なコミュニケーションを促進するためには、受入研究室の国の言語をよく理解する必要があります。英語で十分かもしれませんが、いくつかの国では他の言語が必要です。受入研究室へ馴染むことは、事前に設定した主要な目標を達成することや、結果や進捗の報告(研究室や学部での発表や、原稿の作成など)をより良いものにすることに役立ちます。

あなたの科学的知識を広げることが優先事項です。海外での研究経験を、単に、履歴書を充実させるためや、余暇としての目的と考えてはいけません。余暇は就業時間のあとの数時間か、滞在期間の延長に追加した日にちの分だけの、あくまでオマケのものとしましょう。研究滞在を成功させるための重要なポイントは、受入機関で実施される科学的活動が依然として最優先事項であるという認識を持つことです。特に学生にとっては、所属元の研究室に対して、受入先での研究進捗の定期的な報告をすることが必要です。共同研究の一部は自国に持ち帰り完結させる可能性があることを考慮に入れて、ディスカッションやデータベースの利用、コンピュータプログラム、実験サンプルや材料、受入機関でしか使用できない機器など、そこでしかできないことに注力して行うことが大切です。

 

 

ルール6:研究滞在中の成果についての権利を前もって決めておく

他の種類の共同研究と同様、研究滞在中の結果として生じる論文や発表の権利者を事前に定義することが基本です。論文執筆者および会議の発表者が事前に定められていない場合、通常研究グループ間の関係性を悪化させ、共同研究の中断につながる可能性があります。著者権利の分担のルールは分野によって異なるため、何が期待されているかを把握するようにしてください。著者として認められるための条件を確認しておいてください。共同著者の記載の順序、筆頭著者と責任著者が誰になるのか、決めておきます。最後に記載される著者が、PIであることを意味する分野もあれば、論文への貢献度が最も低いことを意味する分野もあります。関与順に著者を記載することは簡単に思えますが、919人の責任著者に聞いたところ、2/3以上が共著者の記載順に賛同していませんでした。

論文著者と学会発表の権利を事前に決めることと同様に、科学イベントや、文書での発表(学位論文、プロジェクトの報告書、助成金申請書、等々)において、共同研究に対して示す謝辞の扱いは重要事項です。

 

 

ルール7:違いから学ぶ

海外での研究滞在で得られる最も貴重な経験の1つは、異なるスタイルの科学を学ぶことです。他の言語を習得したり、他の文化に没頭したりすることにとってもよい機会です。講義やラボミーティング、輪読会に出席することは、受入機関の学術的環境から学ぶのに最適な方法です。受入先の文化に適応しなくてはならないのはあなた自身であり、受入先の人々があなたに合わせてくれると思っていてはいけません。受入先との文化の違いを理解するのに、書籍(The Culture Map)やScienceが国際的な科学者のために出版した一連のインタビューが役に立ちます(http://www.sciencemag.org/careers/2011/08/international-mobility)。言語と文化が完全に異なる場合は、ややこしい上下関係、いざこざの解決ボディランゲージなどに詳しい、文化的なコーチについてもらうことが有効かもしれません。

 

 

ルール8:適切な方法で問題を解決するよう努める

研究グループやメンバー間の衝突は頻繁にあり、これらの対立は海外からの研究滞在生には特に関連があるかもしれません。そうしたいざこざの早期発見は、明白で誠実な方法で解決するための鍵となります。異なる文化にいるとき、誤解が原因で問題の多くが発生するため、コミュニケーションが重要です。何か困っていたり、必要なことがあるなら、そのように言うことです。あなたが、言われたことに素直で、協力したい気持ちであることを、受入先の人たちに理解してもらいましょう。自分の国とは異なっていて、当たり前でないことがあることを忘れずに、柔軟でオープンで、できるだけ順応するよう心がけましょう。

 

 

ルール9:共同研究を遂行するための様々な選択肢をとる

ビデオ会議やファイル共有サービスなどの使用は、国際的なフライトよりも安価で簡単であるため、国際的な共同研究の遂行に非常に有益です。こうした方法は、経費を下げ、時間と労力の節約ができ、特に資源の限られた国の研究者にとっては重要です。産業界、受託研究機関、規制当局、その他の大学など、他の部門との連携を検討してください。互いに補完できる多様なチームは、しばしば革新性と創造性の発展につながります。

 

 

ルール10:受入れ側になろう

研究者をあなたの機関に招待しましょう。所属機関に国際的な研究者を招くことは、共同研究、ネットワーク、様々な方法や科学的スキルの共有を含め、受入れ側にも訪問者にも利益をもたらすことができます。また、受入れ側の研究室・機関で、招いた研究者に講義をしてもらったり、経験やアイディアを聞くことができます。事務処理や宿泊施設の手配に不可欠なので、早い段階で上司、法務、担当機関などの人たちに協力を仰ぎましょう。また、助成金申請書に、海外からの研究滞在者受け入れのことを含めておくことができます。

 

 

終わりに

ここで紹介したポイントは、受入れ側の研究者にも同じことが言えます。国際的なコミュニケーションと地理的な移動の進歩のおかげで、「脳循環」が起こりやすくなりました。しかし、海外の研究機関を訪問する際には、見逃されがちな細かい色々な事柄を考慮する必要があります。これらのポイントが海外での研究滞在を考慮する際の基本的な指針となるでしょう。

短期研究留学は、あなたの学業・研究生活の中で最高の経験の一つです。是非楽しんでください!

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