リソソームの肥大化によってパーキンソン病を引き起こすメカニズム (Cell Metabolism 2018年10月2日号掲載予定論文)

[紹介論文] Lin, G., Lee, P. T., ... & Bellen, H. J. (2018). Phospholipase PLA2G6, a Parkinsonism-Associated Gene, Affects Vps26 and Vps35, Retromer Function, and Ceramide Levels, Similar to α-Synuclein Gain. Cell metabolism.

[論文URL] https://www.cell.com/cell-metabolism/abstract/S1550-4131(18)30326-7

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結論から言うと、「セラミド蓄積→リソソームの肥大化→神経変性」という新しいパーキンソン病の病態メカニズムを提案した論文。

ということで今回abstractを全訳するのは、2018年10月2日号Cell Metabolismに掲載予定の「Phospholipase PLA2G6, a Parkinsonism-Associated Gene, Affects Vps26 and Vps35, Retromer Function, and Ceramide Levels, Similar to a-Synuclein Gain. (パーキンソニズム関連遺伝子であるホスホリパーゼPLA2G6は、Vps26およびVps35のレトロマー機能およびセラミドのレベルに影響を与え、これはα-シヌクレインの過剰発現時にも保存されている。)」という論文で、米国Baylor College of MedicineのDr. Hugo J. Bellenの仕事である。

論文の視覚的なイメージには、graphical abstractを参考にされると良いと思います。

Abstract

Mutations in PLA2G6 (PARK14) cause neurodegenerative disorders in humans, including autosomal recessive neuroaxonal dystrophy and early-onset parkinsonism. We show that loss of iPLA2-VIA, the fly homolog of PLA2G6, reduces lifespan, impairs synaptic transmission, and causes neurodegeneration. Phospholipases typically hydrolyze glycerol phospholipids, but loss of iPLA2-VIA does not affect the phospholipid composition of brain tissue but rather causes an elevation in ceramides. Reducing ceramides with drugs, including myriocin or desipramine, alleviates lysosomal stress and suppresses neurodegeneration. iPLA2-VIA binds the retromer subunits Vps35 and Vps26 and enhances retromer function to promote protein and lipid recycling. Loss of iPLA2-VIA impairs retromer function, leading to a progressive increase in ceramide. This induces a positive feedback loop that affects membrane fluidity and impairs retromer function and neuronal function. Similar defects are observed upon loss of vps26 or vps35 or overexpression of a-synuclein, indicating that these defects may be common in Parkinson disease.

私訳と勝手な注釈。ホスホリパーゼPLA2G6(PARK14)の突然変異は、常染色体劣性遺伝様式で、神経軸索ジストロフィーおよび早期発症性パーキンソニズム[*パーキンソニズム:パーキンソン症候群はパーキンソン病とは少し異なる。パーキンソン病が先に報告・確立されて、その後パーキンソン病と同じような症状を呈するいろいろな病気や状態が見つかったため、それらをひっくるめてパーキンソン症候群とした。つまりパーキンソン症候群とは、一見パーキンソン病と同じように見えるが、細かく区別していけば異なるいろいろな病気であったり、あるいはパーキンソン症状を1部分症状として合併しているさまざまな病気の集まりといえる。参考:パーキンソン病とパーキンソン症候群について – 伊月病院]といった、ヒトの神経変性疾患を引き起こす。著者らは、PLA2G6のショウジョウバエホモログであるiPLA2-VIAの消失が寿命を短くし、シナプス伝達を障害し、神経変性を引き起こすことを示した。ホスホリパーゼは一般にグリセロールリン脂質を加水分解するが、iPLA2-VIAの消失は脳組織のリン脂質組成に影響を与えず、セラミドの上昇を引き起こした。さらに、ミリオシンまたはデシプラミンといった薬剤処理によりセラミドを減少させることで、リソソームストレスが緩和され神経変性が抑制されることを見出した。iPLA2-VIAは、レトロマーサブユニットのVps35およびVps26に結合してレトロマー機能を強化することにより、タンパク質および脂質リサイクルを促進する。 iPLA2-VIAの喪失は、レトロマー機能を損傷を引き起こし、セラミドの漸進的増加をもたらす。これは膜の流動性に影響を与え、レトロマー機能および神経機能を損なう正のフィードバックループを誘導する。 vps26またはvps35の喪失またはα-シヌクレインの過剰発現によっても同様の欠陥が観察され、これらの欠陥がパーキンソン病における共通の経路である可能性が示唆された。

追記しておくと、先行研究でiPLA2-VIAのmutantにおける寿命の短縮、運動能力の低下、異常なミトコンドリアが観察されている。この論文中でも呼吸鎖複合体Ⅰの活性低下やATPレベルの減少などが観察されており、ミトコンドリアが障害を受けていることがわかる。

別の論文で示された結果によると、セラミドの減少により、ミトコンドリアストレス応答が細胞質に伝わり、それがPolyQの表現型を回復した(セラミドの減少がストレス応答にポジティブにはたらく)。今回の論文では、セラミドが蓄積することでパーキンソンになることが示された(セラミドの増加が神経変性を引き起こす)。これらを合わせて考えるとセラミドが神経変性疾患治療のカギになっていてもおかしくない。

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