ミトコンドリアの分布や形状さえ回復させれば、機能がおちてても、大丈夫?? ―No!(Cell Reports 2018年5月8日号掲載論文)

[紹介論文] Trevisan, T., Pendin, D., ... & Daga, A. (2018). Manipulation of Mitochondria Dynamics Reveals Separate Roles for Form and Function in Mitochondria Distribution. Cell reports, 23(6), 1742-1753.

[論文URL] https://www.cell.com/cell-reports/abstract/S2211-1247(18)30546-1

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結論から言うと、ミトコンドリアに障害を受けたハエの生存能力をレスキューするには、ミトコンドリアの輸送や形状を回復させるだけでは足りず、ミトコンドリアの機能も回復させることが大切だという論文。

ということで今回abstractを全訳するのは、2018年5月8日号のCell Reportsに掲載の「Manipulation of Mitochondria Dynamics Reveals Separate Roles for Form and Function in Mitochondria Distribution. (ミトコンドリアダイナミクスの人工的改変が明らかにした、ミトコンドリア分布における形態と機能の異なる役割。)」という論文。 イタリアIRCCS Eugenio MedeaのLaboratory of Molecular BiologyのAndrea Dagaさんが率いるラボからのお仕事。

論文の視覚的なイメージにはgraphical abstractを見るとよいと思いますので、そちらも参考に。

Abstract

Mitochondria shape is controlled by membrane fusion and fission mediated by mitofusins, Opa1, and Drp1, whereas mitochondrial motility relies on microtubule motors. These processes govern mitochondria subcellular distribution, whose defects are emphasized in neurons because of their polarized structure. We have studied how perturbation of the fusion/fission balance affects mitochondria distribution in Drosophila axons. Knockdown of Marf or Opa1 resulted in progressive loss of distal mitochondria and in a distinct oxidative phosphorylation and membrane potential deficit. Downregulation of Drp1 rescued the lethality and bioenergetic defect caused by neuronal Marf RNAi, but induced only a modest restoration of axonal mitochondria distribution. Surprisingly, Drp1 knockdown rescued fragmentation and fully restored aberrant distribution of axonal mitochondria produced by Opa1 RNAi; however, Drp1 knockdown did not improve viability or mitochondria function. Our data show that proper morphology is critical for proper axonal mitochondria distribution independent of bioenergetic efficiency. The health of neurons largely depends on mitochondria function, but does not depend on shape or distribution.

以下私訳と勝手な注釈。 ミトコンドリアの形状は、mitofusin、Opa1およびDrp1による膜融合および分裂によって制御される一方で、ミトコンドリアの運動性は微小管のモーターに依存する。これらのプロセスが、ミトコンドリアの細胞分布を支配している。これが障害を受けることによる影響は、神経において特に顕著である。[*神経という細胞には、細胞体と軸索とシナプスというように極性(方向性)があるため。]著者らは、融合/分裂の平衡の乱れが、ショウジョウバエの軸索におけるミトコンドリア分布にどのように影響するかを調査した。 MarfまたはOpa1のノックダウンは、進行性の遠位ミトコンドリアの欠損をもたらし、酸化的リン酸化および膜電位の明らかな異常をもたらした。Drp1のダウンレギュレーションは、神経特異的なMarfノックダウンに起因する致死およびエネルギー生合成の障害をレスキューしたが、軸索ミトコンドリア分布に関してはそれほど大きな回復がみられなかった。[*つまり、適切なミトコンドリアの形態が、適切な軸索ミトコンドリア分布に重要であるということがここで示された。]驚くべきことに、Drp1ノックダウンはOpa1ノックダウンに起因するミトコンドリアの断片化と軸索ミトコンドリアの異常な分布を完全にレスキューした。しかし、Drp1ノックダウンが生存能力またはミトコンドリアの機能を回復させることはなかった。[*断片化とか分布の異常をレスキューしたところで、ミトコンドリアの機能は勝手に回復しないし、機能が回復しないと、ハエは生きれない。] これらのデータは、適切なミトコンドリアの形態が、適切な軸索ミトコンドリア分布に重要であり、それがエネルギー生合成の効率とは無関係であることを示している。神経の健康状態は主にミトコンドリア機能に依存し、形状や分布には依存しない。

大切なのは、ミトコンドリアの分布だけを回復させることで全てがうまく行くはずがなかったということを示しているので、ミトコンドリアの分布が大事じゃない、どうでもいい、ということを示している訳ではないという点。ミトコンドリアの分布に関してそれほど大きな回復が見られずにハエの生存能力がレスキューされているじゃないか。と思うかもしれないが、もとの状態にもどっていないだけで、全く変化がない訳ではない。それに、Drp1 KDでレスキューされるMarf KDの致死性やATP生産性もある程度しか回復していない。

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