ROSがもたらす利益と酸化防止剤処理に潜む危険性 (Cell Metabolism 2018年11月6日号掲載予定論文)

[紹介論文] Dogan, S. A., Cerutti, R., ... & Viscomi, C. (2018). Perturbed Redox Signaling Exacerbates a Mitochondrial Myopathy. Cell metabolism.

[論文URL] https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1550413118304558

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結論から言うと、ROS自身が悪いやつなのは間違いないけれども、ROSが蓄積することによって引き起こる様々な補償反応(損害を補う反応)を無視して、抗酸化剤治療に走るのは良くないですよ、という論文。

ということで今回abstractを全訳するのは、2018年11月6日号のCell Metabolismに掲載予定の、「Perturbed Redox Signaling Exacerbates a Mitochondrial Myopathy. (かき乱された酸化還元のシグナリングがミトコンドリアミオパチーを悪化させる。)」で、英国ケンブリッジ大学のDr. Carlo Viscomiが率いるMRC Mitochondrial Biology Unitの仕事である。

論文の視覚的なイメージはgraphical abstractを見るとよいと思いますので、そちらも参考に。

Abstract

Alternative oxidases (AOXs) bypass respiratory complexes III and IV by transferring electrons from coenzyme Q directly to O2. They have therefore been proposed as a potential therapeutic tool for mitochondrial diseases. We crossed the severely myopathic skeletal muscle-specific COX15 knockout (KO) mouse with an AOX-transgenic mouse. Surprisingly, the double KO-AOX mutants had decreased lifespan and a substantial worsening of the myopathy compared with KO alone. Decreased ROS production in KO-AOX versus KO mice led to impaired AMPK/PGC-1α signaling and PAX7/MYOD-dependent muscle regeneration, blunting compensatory responses. Importantly, the antioxidant N-acetylcysteine had a similar effect, decreasing the lifespan of KO mice. Our findings have major implications for understanding pathogenic mechanisms in mitochondrial diseases and for the design of therapies, highlighting the benefits of ROS signaling and the potential hazards of antioxidant treatment.

以下全訳と勝手な注釈。オルタナティブオキシダーゼ(AOX)はコエンザイムQから直接O2に電子を受け渡すことによって、呼吸鎖複合体IIIおよびIVをバイパスする。[*バイパス:迂回させるってこと。 今回で言えば、電子がⅢとⅣを迂回して、AOXからO2に電子を受け渡したってこと。 こうすることでATP産生量は落ちるけども、ROSの産生量は低下する。]したがって、AOXはミトコンドリア病の治療ツールとして提案されている。 著者らは症状の重い筋萎縮を引き起こす、骨格筋特異的COX15ノックアウトマウス(KO)に、AOXトランスジェニックマウス[*tunicate Cionaintestinalis由来のAOXを持つマウスで、このマウス自体の表現型はWTと見分けがつかない。]をかけ合わせた。 驚くべきことに、KO-AOX突然変異体はKOのみと比較して寿命が減少し、筋障害の実質的な悪化を伴った。 KOマウスと比較した際のKO-AOXマウスにおけるROS生産の減少は、AMPK / PGC-1αシグナル伝達[*ミトコンドリア生合成のマスターレギュレーター(主要制御因子)]およびPAX7 / MYOD依存性筋肉再生[*PAX7は筋芽細胞(活性化したサテライト細胞)のマーカー。MYODは分化しているサテライト細胞(普段は何もせずに、骨格筋にへばりついているが、骨格筋が損傷を受けると活性化する。)のマーカー]の障害、補償反応[*この文脈ではROSの減少により活性化する別の経路の様々な反応]の鈍化を引き起こす。重要なことに、抗酸化剤N-アセチルシステインにも同様の効果があり、KOマウスの寿命を減少させた。著者らの知見は、ROSシグナリングがもたらす利益と酸化防止剤処理の潜在的な危険性を示した。これはミトコンドリア病の分子病態と治療法設計の理解に大きな影響を与える。

  1. Reverse Electron Transfer : RETから見るミトコンドリア電子伝達系(Cell Metabolism2016年4月12日号掲載論文) – 論文ナビ 2018-09-25 at 6:00 am

    […] ROSがもたらす利益と酸化防止剤処理に潜む危険性 (Cell Metabolism 2018年11月6日… […]

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