大地震の本震滑り域内部で発生する余震・余効変動モデル

[紹介論文] S. Yabe, and S. Ide (2018), Why do aftershocks occur within the rupture area of a large earthquake? Geophysical Research Letters, accepted, doi: 10.1029/2018GL077843.

[論文URL] https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1029/2018GL077843

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<背景>

大地震の発生後には本震の滑り域の周囲で多くの余震が発生することが知られている.一方,本震の滑り域内部では,滑り量がピークに近い領域では余震が発生しないが,滑り量が比較的小さかった領域では余震が発生する(e.g., Wetzler et al., 2018).地震発生をモデル化する際には,一つの地震発生領域に一つの均質な摩擦パラメーターを持つ地震性パッチを配置することが多い(Kato, 2007).しかし,このようなモデル化の方法では,地震が発生すると一つの地震性パッチの内部では滑り遅れがほぼ完全に解消されてしまい,上記の本震滑り域内部での余震を再現することができない.このような地震現象の階層性を説明するために,滑り弱化距離と呼ばれる摩擦パラメーターの階層性を仮定したモデリングが行われる(Ide & Aochi, 2005)ことがあるが,摩擦パラメーターがそのような階層性を示すメカニズムは理解されていない.また,沈み込み帯で発生する繰り返し地震では余震の発生がほぼないことが観察されており(Uchida et al., 2012),そのメカニズムも理解されていない.

 

<問題の解決方法>

近年のスロー地震の研究の進展により,スロー地震の発生においては断層上での摩擦不均質が重要であることが指摘されるようになった(e.g., Ando et al., 2012).さらに,実際の断層の地質学的観察においても,断層面のフラクタル的凹凸(Candela et al., 2012)や,断層帯内部の脆性・塑性変形の不均質(Fagereng & Sibson, 2010)など,様々な不均質性が指摘されている.そのような断層上の不均質性は,スロー地震発生領域のみに存在すると考えるのは自然ではなく,普通の自信が発生する領域においても存在すると考えるのが自然である.そこで,断層上の摩擦不均質により地震発生の階層的性質,および本震滑り領域内部で発生する余震のモデル化を速度状態依存摩擦則を用いて試みる.

 

<結果>

摩擦不均質を持つ断層は,速度強化領域も含めて断層全体で滑り遅れを蓄積する.一方,断層上の摩擦不均質性を断層中央から端に向けて変化させると,その変化率によって断層の破壊は断層端まで達する場合もあれば途中で停止する場合もある.断層破壊が端まで達する場合には余震が発生しなかった一方,断層破壊が途中で止まる場合には,本震破壊領域の周囲,および内部の滑り量が小さかった場所で余震が発生した.また,これらの余震の発生レートは大森則にしたがって減衰していた.断層破壊が断層端まで達する場合は,蓄積されていた滑り遅れが本震で全て解消されてしまうため,余震が発生しない.一方,断層破壊が途中で止まる場合,本震の破壊領域外部では滑り遅れが解消されない.さらに連続体の変異の連続を満たすために,本震の滑り領域内部でも端に近い領域は本震による滑りを経験した後も滑り遅れを多少残している.この残留滑り遅れが,余効変動および余震として解消される.

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