空間変化する深部低周波微動の潮汐応答性

[紹介論文] S. Yabe, Y. Tanaka, H. Houston, and S. Ide (2015), Tidal sensitivity of tectonic tremors in Nankai and Cascadia subduction zones. Journal of Geophysical Research, 120, 7587-7605, doi:10.1002/2015JB012250.

[論文URL] https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/2015JB012250

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<背景>

普通の地震の発生が潮汐による応力変動に影響されるかは長く議論が行われ,一部の限定的な条件下ではその 可能性が示されているが,明瞭な応答性は見られない.一方で,深部低周波微動の場合はその発生周期に約 12 時間の周期性があり,明瞭な潮汐応答性が見られる.微動発生の周期性に基づくと,その潮汐応答性も空間的 に不均質である.低周波微動活動を地震波エネルギーレート(Yabe & Ide, 2014, JGR)とは異なる面から定量 化するために,本研究では低周波微動の潮汐応答性の空間不均質性を定量化する.

<問題点とその解決法>
これまで微動の潮汐応答性は微動発生の周期性をもとに計測されていた(Ide, 2010, 2012).しかし,潮汐には 様々な周期の変動が含まれており,特定の周期性のみを着目したこれまでの手法では十分ではない.一方,先 行研究は微動の時間あたりの発生数は潮汐応力と指数的な関係にあることを指摘している (e.g., Beeler et al., 2013).そこで本研究では,微動の時間あたりの発生数と潮汐応力の関係を特徴付ける指数の空間分布を 推定することにより,潮汐応答性を定量化する.微動の時間あたりの発生数は,プレート境界におけるスロー スリップの滑り 度と比例関係にあると期待される.この仮定が成り立つとすると,本研究により推定される 指数は滑り 度と応力の間の指数,つまり 度状態依存摩擦則の摩擦パ ラメーターを表していると解釈することができる.

<結果>

微動の時間あたりの発生数と潮汐応力の関係を西南日本,アメリカ西岸 の低周波微動発生域で広く調べた結果,応力の高い時に微動の時間あた り発生数が高くなる 度強化的な指数関係が広く成り立っていることが 確認された.両者の関係を特徴付ける指数は 1-3kPa 程度の値であった. 低周波微動の振幅(地震波エネルギーレート)や微動の継続時間の空間 不均質と比較すると,振幅が小さく継続時間が短い領域では高い潮汐応 答性を示す一方,振幅が大きいか継続時間の長い領域では潮汐応答性は 低くなる傾向にあった.しかし,振幅の大きい微動が発生した後 の微動活動後期には全体的に潮汐応答性が高まる傾向が確認された.

<示唆>
推定された指数の値(1-3kPa 程度)は,通常の地震発生帯のプレート境界 に想定される値(数 MPa 程度)よりもずっと小さいものであった.間隙流 体圧が高いことなどが想定され,スロー地震の応力降下量が普通の地震の ものよりも小さいことに対応していると考えられる.また,微動の時間あ たりの発生数と潮汐応力の関係は 度強化的な摩擦則を示唆するが,純粋 に 度強化的な断層面では安定滑りしか生じず,歪を蓄積することができない.特に低周波微動のように 1Hz を超える地震波を放出するイベントの 存在は,速度(or 滑り)弱化的な摩擦則の存在を要請する.そのため, 低周波微動の発生域では摩擦不均質が存在していることが示唆される.さ らに,微動の振幅・継続時間・潮汐応答性の間の相関関係は先行研究の提 案するスロー地震の摩擦不均質断層モデル(Ando et al., 2012)と調和的 であった.微動の振幅が小さく継続時間が短い場合,微動を構成する地震 性パッチクラスターのサイズ・摩擦強度が低く,周囲の滑りによる応力載 荷が応力集中しやすいため,潮汐応答性が高くなりやすいと解釈できる.

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