男性はハラスメントの被害によって、女性はハラスメントの目撃・伝聞によってバーンアウト傾向が強まる

[紹介論文] Takeuchi M., Nomura K., Horie S., Okinaga H., Perumalswami C.R., Jagsi R. (2018) Direct and Indirect Harassment Experiences and Burnout among Academic Faculty in Japan, The Tohoku Journal of Experimental Medicine, 245, 37-44.

[論文URL] https://www.jstage.jst.go.jp/article/tjem/245/1/245_37/_article/-char/en

著者解説
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<研究の背景>
2017年Natureで、日本の大学の研究業績・研究環境の悪化が特集されました。また、日本は女性研究者の割合が他国に比べて低く、女性研究者の研究環境も問題になっています。この論文では、研究環境の悪化を招く原因の1つとしてハラスメントに注目し、日本の大学教員を対象にハラスメントの心理的影響を検討しました。

先行研究では、ハラスメントが被害者の心理・健康・仕事上のパフォーマンスに悪影響を及ぼし、退職に結び付くことがわかっています (Fitzgerald et al. 1997)。また、直接ハラスメントの被害にあわなくても、ハラスメントを目撃・伝聞しただけで、同様の悪影響を受けることもわかっています(Glomb et al. 1997)。しかし、このような目撃・伝聞の影響に注目した研究はあまり行われていません。
この論文では、ハラスメントの被害にあうことを「直接的ハラスメント」、ハラスメントを目撃・伝聞することを「間接的ハラスメント」と定義し、直接的・間接的なハラスメント経験と就労者の心理状態との関係、ソーシャル・サポートによる緩衝効果を検討しました。

<方法>
日本の大学教員1189人を対象に質問紙調査を行い、330人から回答を得ました(回収率27.8%)。質問紙では、ハラスメントについて、セクシャル・ハラスメント(本人の望まない性的な誘いや言動)、ジェンダー・ハラスメント(性役割の強制)、アカデミック・ハラスメント(研究における嫌がらせ)の3種類のハラスメントについて、被害経験および目撃・伝聞経験をたずねました。また、就労者の心理状態として、バーンアウト(燃え尽き症候群;ストレスにより仕事への意欲を失った状態)の程度を測定しました。その他、職場におけるソーシャル・サポートの程度、性別・年齢等の基本情報を質問しました。

<結果>
直接的ハラスメント、間接的ハラスメントとも、男性より女性のほうが多く経験していました。
男性は、直接的ハラスメントを受けた場合にバーンアウト傾向が強くなっていました。しかし、職場のソーシャル・サポートによって、その悪影響が低減されました。
一方、女性は、間接的ハラスメントを受けた場合にバーンアウト傾向が強くなっていました。その影響はソーシャル・サポートによって軽減されませんでした。

今まであまり注目されてこなかった、ハラスメントの男性被害者、およびハラスメントの間接被害者に対して、支援の重要性が示されました。ハラスメントのない環境をつくることは、男性と女性の両方にとって良い結果をもたらし、学術労働力の維持のために重要だと言えます。

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