主観的年齢が若くなくても、加齢に対してポジティブなら幸福感は減らない
[紹介論文] Mock S.E. & Eibach R.P. (2011) Aging attitudes moderate the effect of subjective age on psychological well-being: Evidence from a 10-year longitudinal study. Psychology and Aging, 26(4), 979-986.
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研究の背景と目的
中年や高齢者の人々は、自分の年齢を実際よりも若いと感じている人が多いです。アメリカでは、40歳以上の人の主観的年齢は、平均して実際の年齢の20%若いことがわかっています。これまでの研究では、主観的年齢が若くない人は、生活満足度や自尊感情が低いなど、ネガティブな結果に結び付くことが示されていました。
しかし、主観的に年を取ること自体は必ずしもネガティブなことではなく、年を取ることが悪いことだという固定的態度によって、そのようなネガティブな結果に結び付くのではないでしょうか。本研究では、高齢者の主観的年齢と幸福感の関係が、加齢に対する態度によって緩衝されると考えました。具体的には、加齢に対してネガティブな態度を持つ人は、年を取るほど幸福度が低いけれども、加齢に対してポジティブな態度を持つ人ではそうではないと予測しました。
方法
上記の仮説を検討するため、主観的年齢と心理的幸福を10年以上にわたって調査している、アメリカのNational Survey of Midlife Development in the United States-IIという縦断データを分析しました。
結果
分析の結果、仮説の通り、加齢に対する態度がネガティブなときは、高齢者の主観的年齢が高いほど、生活満足度が低く、ネガティブな影響が強くなりますが、加齢に対する態度がポジティブなときはそのような傾向は見られませんでした。
年を取ったと感じることは必ずしもネガティブな結果をもたらすものではなく、加齢をどのように捉えているかは重要であることがわかりました。