交通流の過剰制御はデッドロックを生む

[紹介論文] T. Ezaki, R. Nishi, and K. Nishinari (2015) Taming macroscopic jamming in transportation networks. J. Stat. Mech. P06013.

著者解説
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都市部を車で走っていると酷い交通渋滞に捕まることがあります。渋滞の研究は歴史が長く、最近では交通をさまざまな方法で制御することによって都市部の渋滞を緩和することができないかという研究が進んでいます。実際に混雑時には追加の通行料を徴収することで特定の部分の交通量を削減するという取り組みもヨーロッパを中心としておこなわれています。渋滞の基本的な性質として、混めば混むほど流れる量が低下するということがあります。複数の道路がネットワークをなしている都市部で、特定の箇所の流れを遮断したときにその波及効果で何が起こるかという問題は非常に難しい問題で、本研究ではその理論的基礎にあたる解析を行いました。

 

複数の道路がネットワーク状につながった状態を模した数理モデルを構築し、「ある一定以上の混雑具合になったら、その道路への流入は封鎖する」という制御を考えました。この制御下では、ネットワーク全体の交通密度(車の台数)が上昇するにつれて

(a) 制御の必要条件を満たさないので何も起きない

(b) うまく制御できる

(c) すべての場所が制御により封鎖されてデッドロックが起きる

という三つの相が生じることが分かりました。この封鎖型の制御はシステム全体の実効的な容量を強制的に下げてしまうので、不適切な制御は(c)のような大惨事(?)がを生んでしまいます。本研究ではこのデッドロックが生じる転移点を理論的に求めました。ネットワークのランダムさを仮定した近似ではありますが、一見して到底理論的な解析ができそうにないこのようなモデルで理論解析ができたのは興味深い発見でした。

本研究はJournal of Statistical MechanicsのHighlightsに選出されました。

 

図. (a) 制御が行われない密度領域. (b) 制御により全体の流量が改善される領域. (c) 制御のせいで(!)デッドロックが起きてしまい, 全体が固まってしまう領域.

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