協力行動において文化による差はほとんどない?

[紹介論文] U.J. Frey (2019) Long-term evidence on cooperation and cultural differences in public goods dilemmas. Biology Letters 15, 20190143.

[論文URL] https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsbl.2019.0143

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興味深い論文が出ていたのでアブストの内容をメモしておきます。

前提知識

公共財ゲームの話です。ご存じない方のために簡単に説明すると、例えばみんなで税金を払って公共サービスを維持するとみんなハッピー、という状況では自分だけお金を払わなければ得できてしまいます(フリーライダー;現実には許されない場合が多いですが)。しかし、現実問題ではフリーライダーによって協力が崩壊することなく意外と(?)維持できていることも結構あって不思議だ、という前提があります。このような問題を分析するためによく用いられるのがこの公共財ゲームです。多くの研究で、被験者を集めてきてこの公共財ゲームに参加させ、そのふるまいをみる、ということがすでにかなりやられています。

論文のアブスト部分の内容


人同士の協力率は非常に状況に依存するため、この論文では新しい設定、オンラインゲームにおける公共財ゲームという環境を考えます。このユニークなデータセットを分析することで、複数の重要な問題が明らかになりました。このゲームの参加者は10カ国から集められており、協力行動に対する文化的な影響を分析することができました。各国間で協力率を比較すると、どの国も8.5%(アルゼンチン)から14.1%(ギリシャ)までの間に収まっており、差はわずかでした。さらに、協力は長期間にわたって安定していました。文化的、経済的、宗教的背景が異なっていても、協力率に目に見える影響は見えませんでした。むしろ、個人差のほうがより大きな影響をもっていました。最後に、実際の協力レベルは古典的な実験によって示唆されたものより低いかもしれないことが示唆されました。

 

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