脳のfMRIデータから個人を特定することができる

[紹介論文] E. S. Finn, et al. (2015) Functional connectome fingerprinting: identifying individuals using patterns of brain connectivity. Nature Neuroscience 18(11), 1664-1671.

[論文URL] https://www.nature.com/doifinder/10.1038/nn.4135

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本論文で示されたこと

fMRI(磁気を使って脳の活動を測定する手法)を使用した多くの研究では、統制群と実験群(例:健常者のグループと特定の病気の患者のグループ)に分けてその差を分析するということが行われてきました。一方で同じグループの中でも個人差が存在することは以前から言われており、本研究ではその個人差だけで個人を特定することができるかを調べています。また、個人の流動性知能(新しい場面に対応する能力を司る知能)をfMRIのデータからある程度予測することができることが示されました。

 

詳細

データについて

Human Connectome Projectによって取得された126名の健常な被験者のfMRIのデータを分析しました。実験は二日にわたって行われ、

1日目:安静時(1), working memory task, emotion task

2日目:安静時(2), motor task, language task

の6つの条件でデータが取得されています。

 

個人予測の手法

手法は比較的単純で、functional connectivityと呼ばれる脳の領域同士の活動の相関度合いをすべての領域のペアで計算し、その値をデータベースと比較して一番近いものを予測とする、というものです。

(A)まず、脳の268個の領域(ROI; 関心領域)に対して、活動シグナルの相関をとります(268×268の相関行列になります)。この相関の計算は各被験者、各条件に対して別個に行います。

(B)実験条件を一つ選びます。例えば安静時(1)を選んだとします。この条件で計算した相関行列(Aで計算したもの)は被験者126人分あるわけですが、このうちから一つ選びます(Ctestとします)。このデータが誰のものかわからないとき、ほかの条件で測定したfMRIから計算した相関行列を使って当てることができるか、という課題を考えます。

(C)例えば、安静時(2)の条件の相関行列データを照合データベースとして使うことにします。つまり、この条件の相関行列とそれが誰のものかというラベルが使えます。この照合データベースにある相関行列(Cdbとします)と、いま問題となっている他の条件で測定したCtestの「近さ」を順番にすべて計算していきます。行列と行列の「近さ」は行列要素のPearson相関で測ります。この距離が一番近かったCdbが誰のものだったかを照合し、予測とします。

 

個人予測の結果

上記のように安静時(2)のデータを使って安静時(1)のデータがだれのものか当てるという課題では約93%、その逆でも約94%と非常に高い精度で推定することに成功しました。すなわち安静時のfunctional connectivityは個人ごとに異なっていて、ある程度保存されているということが示唆されます。

この研究のポイントとしては異なるtask条件同士や安静時とtask条件の組み合わせでもそれなりに予測が可能であったということです(54%~87%)。一般にtask条件ではそのtaskに応じた脳の領域が活性化するわけですが、領域の相関の個性はそうした状況でもある程度保存されているということを示唆しています。

また、予測に貢献した領域のペア(リンク)を見ていくと前頭頭頂ネットワーク(frontoparietal network: FPN)に多いことがわかりました。

 

流動性知能の予測

流動性知能の予測に関しては安静時のみのデータで分析します。大まかには流動性知能の指標gFと相関の大きいconnectivityをもつリンクを見つけ、それらの値で回帰モデルを作るという話です。

(A)まず、予測したい人を除いた125人分の相関行列のデータと、それぞれの被験者のgFとの相関をとり、相関が有意なリンクを特定します。

(B)相関が正のものと負のもので分けます

(C)相関が正のリンクについて、そのconnectivityの値をすべて足して、その人の「ネットワークの強さ」を計算します。負のリンクについても別個に同様の作業を行います。

(D)Cで計算した「ネットワークの強さ」でgFの値を線形回帰します

(E)この回帰式を使って最初に除いた被験者のgFを予測します

予測されたgFと実際のgFを比較したところr = 0.5 (P<10^{-9})と有意な正の相関がみられました。また、予測に貢献したリンクについては今回もFPNに多く含まれていました。

 

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