暴力的なゲームによって攻撃性が高まるのか? -2か月に渡る長期的な影響を初めて研究-
[紹介論文] Simone Kühn, Dimitrij Tycho Kugler, Katharina Schmalen, Markus Weichenberger, Charlotte Witt & Jürgen Gallinat (2018) Does playing violent video games cause aggression? : A longitudinal intervention study. Molecular Psychiatry, doi:10.1038/s41380-018-0031-7
暴力的なテレビゲームをすることで、攻撃性が高まったり共感性が低くなったりすることを心配する声はよく聞かれます。この問題に関する研究も多く行われていますが、これまでの研究では、暴力的なゲームが攻撃性を高めるという研究も、そのような影響は小さいという研究もあり、一貫した結果が得られていませんでした。
また、これまでの研究は、ゲームの短期的な効果に焦点が当てられてきました。参加者に4分~2時間ゲームをプレイしてもらい、その直後に攻撃性や共感性を調べるという方法です。しかし、これらの結果は、暴力的なゲームをしたことによる短期的なプライミング効果だと解釈でき、長期的な影響はないと考えられます。
本研究は、ゲームのプレイ期間を2か月間と長期にし、さらにその2か月後までの長期的な影響も調べました。
調査内容も、攻撃性・共感・対人能力に関する質問紙と行動指標、衝動性に関する変数(刺激欲求、退屈傾向、リスクテイキング、時間割引など)、精神的健康(抑うつ、不安)、実行制御と多岐にわたっています。
チラシとインターネットで募集した90人が参加者でした。参加者は、(1)暴力的なテレビゲームをするグループ、(2)暴力的でないテレビゲームをするグループ、(3)テレビゲームをしないグループにランダムに分けられました。(1)と(2)のグループは2か月間、毎日30分以上ゲームを行いました。ゲーム期間前(baseline)、2か月のゲーム期間の後(post1)、さらにその2か月後(post2)の3回、攻撃性等を調査しました。
(1)暴力的なゲームをしたグループの変化を、(2)暴力的でないゲームをしたグループ、(3)ゲームをしなかったグループとそれぞれ比べたところ、いずれも有意な差はありませんでした。また、ゲーム期間前(baseline)を、ゲーム期間後の結果(post1)、さらにその2か月後(post2)の結果とそれぞれ比較したところ、有意な変化はありませんでした。
(従属変数が多数あるので、分析では有意水準が調整してあります)
この結果は、暴力的なゲームの悪影響を否定するものです。