プラズマ中の熱力の原理,ならびに運動論的コードへの導入方法について
[紹介論文] Yuki Homma, Akiyoshi Hatayama, Journal of Computational Physics (2012) 3211 Yuki Homma, Akiyoshi Hatayama, Journal of Computational Physics (2013) 206
*Yuki Homma, Akiyoshi Hatayama, Journal of Computational Physics (2012) 3211
“Numerical modeling of thermal force in a plasma for test-ion transport simulation based on Monte Carlo Binary Collision Model”
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*Yuki Homma, Akiyoshi Hatayama, Journal of Computational Physics (2013) 206
“Numerical modeling of the thermal force in a plasma for test-ion transport simulation based on a Monte Carlo Binary Collision Model (II) – Thermal forces due to temperature gradients parallel and perpendicular to the magnetic field”
熱力 / Thermal force は不純物輸送において重要である.熱力のシミュレーションモデルには流体的モデルと運動論的モデルがあるが,流体的モデルでは熱速度が不純物イオン(テスト粒子)の速度よりも十分速くなくてはならない.∇Teについてはこの条件を満たすが,∇Tiについては有効ではなく,運動論的モデルを導入する必要がある.本論文ではテスト粒子シミュレーションにおける衝突項に熱力を導入するモデルを紹介している.
まず,熱力について丁寧な説明がある.
熱力は,温度勾配によって生じる衝突周波数の変化によって生じる力である.
∇T→
(低温側) ●(テスト粒子) (高温側)
プラズマにおいては衝突周波数はに比例するので,高温側ほど衝突周波数が小さくなる.したがって,テスト粒子は低温側からの衝突をより強く感じ,∇Tの方向の力を感じる.そのため,不純物が高温側(プラズマ中心部)へ向かうことが問題となる.
・:「平行」熱力.磁場に対して平行方向には,磁力線に沿って
方向の力を受ける.
磁場存在下では荷電粒子はラーマー旋回しており,磁場に対して垂直な方向には2方向あるが,温度勾配がある方向を添字⊥,もう一方を添字^で記す.すなわち,
,
.
・:「反磁性」熱力.磁場に垂直な温度勾配によって駆動される.(論文中では「反磁性方向に働く」と書いているが,ion-ionの衝突を考えた場合はテスト粒子はionの反磁性流と反対方向に力を受けるのではないか?確かにelectron-ionの衝突を考えた場合にはionはionの反磁性方向の力を受けるが...?)この熱力によってテスト粒子は
のドリフトを受け,高温側から低温側へとドリフトする.この効果は”temperature screening effect”と呼ばれている.
・:「垂直」熱力.
方向の力を受ける.
モデルの数式は元の論文を参照.
このモデルの妥当性を検証するために,反磁性熱力による速度変化やscreening effectに関して理論値との比較を行っている.